長女(むーちゃん)の「じゃあさー」はおねだりの合図。交渉術に感心した話

最近、長女(むーちゃん)にはひとつの口ぐせがあります。

それは、「じゃあさー」。

突然ぼくの近くにやってきて、独り言のように話し始めるのです。

「帰って、手を洗って、トイレして……」

ずいぶんお利口さんな予定を並べるなと思って聞いていると、最後に必ず本題が出てきます。

「おやつ食べる!」

あるいは、

「動画見る!」

どうやら「じゃあさー」は、むーちゃんのおねだりの合図らしいのです。

むーちゃんの「じゃあさー」は突然始まる

むーちゃんの「じゃあさー」は、決まったタイミングで始まるわけではありません。

気づくと、いつの間にかぼくの近くにやってきています。

面と向かって話しかけるというよりは、独り言の続きを話し始めるような感じです。

しかも、あまり目を合わせません。

ふと隣に来て、

「じゃあさー、帰って、手を洗って、トイレして……」

と未来の予定を組み立て始めます。

ぼくはだいたい途中で気づきます。

「ああ、これは最後におやつが来るな」

あるいは、

「今日は動画かな」

それでも途中で止めたりはしません。

最後まで聞くことにしています。

なぜなら最近は、

「今日はどんな理屈で来るんだろう」

と少し楽しみにしている自分がいるからです。

お願いの内容そのものよりも、むーちゃんがどんな順番で話を組み立てるのか、そのほうがおもしろいのです。

そして予想どおり、最後に本題が出てきます。

「おやつ食べる!」

「動画見る!」

ここまで聞くと、むーちゃんなりに考えた小さなプレゼンテーションだったことがわかります。

兄妹でこんなに違う

むーちゃんの姿を見ていて感じるのは、兄妹でも本当に個性が違うということです。

長男(うおた)は、同じ年頃でもこういう交渉をほとんどしませんでした。

もちろんお願いごとはありましたが、むーちゃんのように前置きを積み上げてから本題を出すスタイルではありません。

だからこそ、ぼくはむーちゃんを見るたびに、

「小賢しいなあ」

と感心してしまいます。

もちろん褒め言葉です。

相手がどう受け取るかを考えながら話しているようなところがあって、その様子がおもしろいのです。

振り返ってみると、むーちゃんは小さい頃から、うおたよりも会話の習得が早い印象がありました。

言葉を覚えるだけではなく、言葉を使って自分の希望を伝えようとする力も強かったのかもしれません。

「じゃあさー」のあとに続く長い説明を聞いていると、子どもなりに一生懸命考えていることが伝わってきます。

子どもは親をよく見ている

むーちゃんの「じゃあさー」を聞いていて思うのは、子どもは本当に親をよく見ているということです。

最近になって気づいたのですが、もしかすると、むーちゃんは相手を選んで話をしているのかもしれません。

妻とはどんなやり取りをしているのか詳しく知りませんが、少なくともぼくは、むーちゃんが話し始めると最後まで聞いてしまいます。

一方で妻は、子どもたちの生活リズムをとても大切にしています。

おやつの時間や寝る時間、動画を見るタイミングなど、毎日の積み重ねを考えながら接してくれているので、わが家の生活が安定しているのは妻のおかげです。

だから、むーちゃんのおねだりがいつも通るわけではありません。

むしろ、

「今日はもうおやつはおしまいだよ」

「動画はまた今度ね」

と伝える場面のほうが多いくらいです。

そんな妻が生活の土台を支えてくれているからこそ、ぼくは少し余裕を持って、むーちゃんの話を聞いていられるのかもしれません。

もちろん、ぼくも何でも許しているわけではありません。

最後は親として判断します。

でも、その結論にたどり着くまでの会話には、今しかない子どもらしさが詰まっています。

「じゃあさー」

と始まる小さな作戦会議。

その先に待っているオチはだいたい予想できます。

それでも最後まで聞いてしまうのは、むーちゃんがどんなふうに言葉を使い、どんな順番で気持ちを伝えようとしているのかを見るのが楽しいからです。

そして、作戦が成功しておやつや動画の許可が出ると、むーちゃんは全力で喜びます。

その姿を見ると、どれだけ小賢しい作戦を立てていても、やっぱりまだまだ子どもなんだなと笑ってしまうのです。

子育てをしていると、「ちゃんと教えること」や「正しく導くこと」に意識が向きがちです。

でも、ときにはこうして子どもの話に付き合いながら、その子らしい言葉の使い方や考え方を眺める時間も悪くありません。

今日もきっと、どこかのタイミングでむーちゃんがやってきます。

そして何気ない顔で言うのです。

「じゃあさー」

その瞬間、ぼくは少しだけ楽しみになります。

「さて、今日はどんな理屈で来るんだろう」と。